会社員のAさんは、名古屋で新築マンションの購入を検討しています。パート勤めの妻と一緒に、マンション購入資金をコツコツ貯めてきたものの…数千万円もする一生に一度の買い物を「一括払いで!」というのは、さすがに難しい状況です。そこでAさんは現実的に、住宅ローンを利用することにしました。住宅ローンを利用して住まいを購入すると、「住宅ローン控除」の適用を受けられることは知っているのですが、その内容については、まだまだこれから勉強する段階。まずは「住宅ローン控除の基本」を勉強することにしました。

「住宅ローン控除」とは、住宅ローンを利用して住まいを購入した場合に、「年末時点での住宅ローンの残高の0.7%」が、入居時から最長13年間にわたって、給与などから納めた所得税や住民税から控除される制度のことをいいます。「住宅ローン控除」または「住宅ローン減税」として知られる制度ですが、正式には「住宅借入金特別控除」といいます。

「住宅ローン控除を利用すれば、税金がたくさん戻ってくる」というイメージをお持ちの方が多いようですが、実際のところ、ご自身が納めた所得税や住民税以上のお金が戻ってくることはありません(所得税から控除できなかった分のお金は、住民税から控除されます)。そういった点も含めて、まずは住宅ローン控除の仕組みを確認してみましょう。

「住宅ローン控除」は、「住宅ローンを利用して新築マンションを購入すれば、どんな場合でも適用される」わけではありません。適用要件としては以下のようなものがあります。

控除の対象となる住宅ローンは、銀行などの金融機関が提供する一般的な住宅ローンや、「フラット35」などになります。親族からの援助、いわゆる「親ローン」「身内ローン」は対象になりません。また、勤務先からの借入金の場合は、0.2%以上の利率が必要です。一般的な住宅ローンを利用して、住宅ローン控除を適用させるほうが良いのか?親族からの援助を受けて、住宅ローンの利息を払わないほうが良いのか?について、しっかりと考えておく必要があります。

※2024年(令和6年)1月1日から2025年(令和7年)までに入居すること。

これについては、「自分自身が住む」ことが必要です。子どもや親が住むための住まいの場合、適用されません。

注意すべき点は、「年収」ではなく「所得」である点です。
年収から必要経費(サラリーマンの場合は給与所得控除)を差し引いた、すべての所得の合計が2,000万円以下であれば適用となります。

なお、「住宅ローン控除」は新築マンションにのみ適用される訳ではありません。一戸建て、中古住宅、リフォームや増改築の場合も「住宅ローン控除」を受けることができます。それらの適用要件は上記のほかに細かく決められていますので、きちんと調べておきましょう。

前述の通り、「住宅ローン控除」は中古住宅やリフォームや増改築でも利用できますが、今回は新築住宅を購入する場合の借入限度額や控除額などを確認します。なお、借入限度額や控除額などは、住宅の種類(性能)や入居時期によって変わります。早速、下の表でチェックしてみましょう。

住宅の種類 借入限度額 控除率 控除期間 最大控除額(年間)
長期優良住宅
低炭素住宅
4,500万円 0.7% 13年 31.5万円
ZEH水準
省エネ住宅
3,500万円 24.5万円
省エネ基準
適合住宅
3,000万円 21万円
住宅の種類 借入限度額 控除率 控除期間 最大控除額(年間)
長期優良住宅
低炭素住宅
5,000万円 0.7% 13年 35万円
ZEH水準
省エネ住宅
4,500万円 31.5万円
省エネ基準
適合住宅
4,000万円 28万円

たとえば、子育て世帯が新築住宅(長期優良住宅・低炭素住宅)を購入し、令和6年末までに入居することを前提に5,000万円を借りるとします。上の表をもとに13年間の最大控除額を単純計算すると、「13年で455万円が戻ってくる!」といったような印象を受けます。しかし、すべての人に最大控除額が適用されるわけではなく、一人ひとりの条件によって最大控除額は変わってきます。

そもそも、ローン残高は支払いをしている限り減っていきますし、ご自身が納めた所得税や住民税以上のお金が戻ってくることはありません。それでは、実際にはどのくらいのお金が戻ってくるのでしょうか。モデルのAさんを例に、シミュレーションをしてみましょう。

サラリーマンであるAさんが5,000万円の新築マンション(長期優良住宅で令和6年中に入居予定)を購入した場合、どのくらいの控除があるのかを大まかに試算してみました。条件・結果は世帯ごとに変わってきますので、あくまでも参考例としてご確認ください。

年収は… 500万円(給与所得控除後の所得金額=356万円)
所得控除の額の合計は… 160万円
所得税額(源泉徴収税額)は… 10万円
住民税額は… 20万円
住宅ローンの借入額は… 5,000万円(頭金・ボーナス払いなし)
年末時点でのローン残高は… 4,900万円

控除額の上限は「年末時点での住宅ローンの残高の0.7%」です。
ただし、Aさんの場合、住宅ローンの借入額が「長期優良住宅の借入限度額4,500万円」を超えていることから、控除額の上限は控除限度額の「31万5,000円」となります。

Aさんの所得税額は10万円ですので、所得税分「10万円」は全額が控除されます。
控除額の上限は31万5,000円でしたので、控除できていない額は21万5,000円です。
控除しきれなかった額については、住民税から控除されることになります。

Aさんの住民税額は約20万円ですが、住民税からの控除額は、
「所得税の課税総所得金額等の合計額の5%」の額で「最高9万7,500円」
です。

この試算の場合、Aさんの所得税の課税総所得金額は356万円-160万円=196万円になるので、196万円×5%=9万8,000円となり、住民税からの控除額は最高の「9万7,500円」となります。

最終的に、Aさんの場合…
所得税からの控除額「10万円」と、住民税からの控除額「9万7,500円」の合計
「19万7,500円」が控除額となります。

「住宅ローン控除」の適用を受けるためには、「入居した翌年」の間に確定申告をする必要があります。確定申告をしないと、納め過ぎた所得税を還付してもらうための「還付申告」ができないため、「住宅ローン控除」の適用が受けられなくなります。

名古屋市内のマンションを購入し、居住されている方の場合、名古屋市内の居住地を管轄する税務署で確定申告を行うことになります。「税務署に行く時間がない」という場合は、郵送やインターネットでも手続きが可能です。

Aさんのような会社員(給与所得者)の場合、2年目以降は確定申告をしなくても、勤務先の年末調整で手続きができます。2年目以降は、10月下旬頃に手元に届く税務署からの「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」と、金融機関からの「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」を勤務先に提出することで、確定申告をする必要がなくなります。